薩摩半島から大隅半島へフェリーで渡ります。
朝8時のフェリーに乗るため宿の朝食はなし。
コンビニでおにぎりでも買っていこう。
でも「予約してないんですか?乗れないかもしれないので、急いだ方がいいですよ」と宿の人。
「そうですか。急ぎます」
乗れないって、まずいだろ。
結局コンビニ寄らずに、直接フェリーターミナルへ。

結果的には少し余裕あったけど、なんか時間に追われている旅な気がする。

さようなら~、薩摩半島、さようなら~、開聞岳。

朝食買えなかったけど、ポケットを探すと、干柿バー。
出発前にスタッフ絹子が「もしお腹が空いたら」と持たせてくれたもの。
いやいや、本当にありがたい。
これ美味しいし、かなり腹持ちいいです。
ポケットにいつも干柿バー、お勧めです。

約50分の船旅、大隅半島到着。
朝の凛とした空気、潮の香り、小さいけど頼もしいバイク。
旅してる感、いいなあ~。
向かうのは最後の目的地。
郷原さんのいるハロー南風さん。

港から30分くらいで到着です。
素敵な建物ですね。
ここで芋モンブランなどのスイーツを作ったり販売したりしています。

「ようこそ!お待ちしてました」
と出迎えてくれたのは、左から室長の山下さん、事務の女性、業務長の牧内さん、そして社長の郷原さん。
「星野さん。昨日は本当にすみませんでした。すっかり勘違いしてまして」と郷原さん。
「いやいや、いいんです」
「昼食、食べていってください。私が作りますので」
「昼食ですか…。あまり時間ないので大丈夫ですよ。今日午後の飛行機で帰るんで」
「何時なら間に合います?」
「間に合うって言うか、他も寄りたいし、11時には出たいかなあ」
「分かりました。まずは牧さんが畑を案内します」
「畑は見たいですね。せっかく来たので。でもお昼は大丈夫なんで」
その後、説明上手でとても感じのいい牧さんが、車で何か所かの畑を案内してくれました。

「うちは3年かけて芋を育てます。左は先日芋を掘ったところ、右が小麦を植えるところ、真ん中は一年放置して土を休ませます。これを1年毎に移動します。こうして輪作して芋を育てているんです」
*輪作とは…同じ品種の作物を毎年同じ場所で栽培すると、病気になりやすい作物ができたりする連作障害が起きます。それを避けるために、同じ場所で同じ品種は作らない。これが輪作です。

「ここが先日小麦の種を蒔いたところです。足跡が残っていますが、ずっと奥まで踏みしめながら蒔いていきます」
「時間かかってるんですね」
「海水も撒きます」
「目的はミネラル、ですか?」
「そうです。ミネラルを土に補給するためです。軽トラで運ぶんですが、載せられる重量が決まっているので大変なんです」
「土壌は黒土に見えますが」
「表面はですね。でもここはシラス台地なので」
「ここがあのシラス台地ですか。学校で習いました。なるほど~。だからさつま芋の栽培に適しているんですね」

「これは、もしかして」
「そうです。うちのさつま芋で9割がコガネセンガンです。コガネセンガンは収穫してどんどん味が落ちていくんです。紅はるかとか、他のさつま芋は数週間保管して美味しくなってから出荷します」
「そうですね。でもそうなると品質管理が難しいですね」
「はい、鮮度が一番です。朝には工場にパートの方が来るので、それに間に合うように私は夜中の2時ころに車のライトを頼りに芋を収穫したり。会社に戻り、続いて芋を水洗いします。この時期なので、本当に水が冷たくて」
「夜中にそこまでするって、すごいですね」

「ここはこれから収穫する畑です」
「全然草に覆われているじゃないですか」
「はい、草はそのままです。あくまでも自然に。当然農薬も除草剤も使いません」

店に飾ってあった「3年間、じっくりと大地を熟成しています」と書かれていたのは、こういうことなんですね。
こういうキャッチコピーって、つい読み流しちゃうけど、知ると深いなあ。
「コガネセンガンはこの辺では普通に作られています。コガネセンガンを使ってスイーツを作る人も増えてきました。だけど他と違うところ、土から熟成する、これが私たちのこだわりなんです。大変ですけど、だからいいもの、本物ができます」
そもそも、考えてみたら、ケーキとかのスイーツを作るパティシエで、原材料から作っている人っています?
しかも、ここまでこだわって。
そもそも、スイーツと畑、関係ないじゃんって、普通は思う。
でも、ここは違う。
芋モンブランの作る様子より、畑を案内してくれた意味。
なるほど、そこが原点であり、本質なんですね。
それと、牧さんが心底この会社とこの地を愛しているのか、伝わってきました。

ちなみに「これ、社長が乗っていたバイクです。今は忙しくて乗れてないみたいです」
「ボロボロじゃないですか。動かないですよね」
「でも、絶対手放さないって。何十万円かかっても直すって言ってます」
「バイクって乗らないと、こうなっちゃいますからね。でも、乗りたいって気持ちがあるって、同じバイク乗りとして嬉しいですよ。忙しくても、気持ちは現役ライダーですね」
「社長、好きなんですよ、バイクが。では戻りましょう」
最終回に続く
(5回の予定だったけど、長くなったので6回まで延長)