行ってきました鹿児島2「庭師の柑橘農園編」

朝出発して、南さつま市へ。

峠越え、寒かった~。

ホント寒くて、ヘルメットのシールドもバイクのミラーも真っ白に曇るほど。

地元の人に聞いたら「5度位まで下がったかな」とのこと。

震える手でコンビニのコーヒー。

九州とは言え12月、ちょっと舐めてました。

まず訪れたのは、万世特攻平和祈念館。

この手の場所で有名なのは知覧ですが、ルート的にこちらが最適だったので、立ち寄ってみました。

戦後、海から引き上げられた本物の零式偵察機。

子犬を囲む特攻隊員の写真。

出撃のわずか2時間前に撮影された写真だそうです。

なんて無邪気であどけない表情なんでしょう。

パンフレットには「特攻隊員には遺骨はありません。しかし、この世に書き残した遺書や残された遺品があります」と書かれていました。

資料館の2階は撮影禁止で、特攻隊員の写真や遺品や遺書がたくさん展示されていました。

遺書の多くは、両親にあてて書かれてたものでした。

多くは二十歳前後の若者、とは思えないほど立派な文面。

感謝、そして、別れ…。

感じたこと、たくさんあったけど、書いたらものすごい量になりそうなので割愛します。

ただ言えるのは、命がけで祖国や家族を守ろうとした若者たちがいた事を決して忘れてはいけない。

それ以前に知ること。

それと、なぜ人と人が争わなくてはいけないのか、昔も、そして今も。

この辺りを旅行することがあれば、是非一度訪れてみて下さい。

次の約束もあり、1時間ほどの滞在でしたが、時間が全然足りなくて、後日浜上さんに聞いたら「行かれたんですね。あそこは半日ほどあってもいいくらいですよ」とのことでした。

さて、くじら館で待ち合わせしたのは柑橘農家の橋本さん。

簡単に説明すると、以前からお付き合いのあった長崎さんという自然栽培でグレープフルーツを作っていた農家さん。

長崎さんが今年亡くなられ、後を継いでくれたのが橋本さん。

出身は石川で、2年前にこちらに移住。

短い間だけど、長崎さんにノウハウを学び今日に至る。

先日「長崎さんを継ぎました」との連絡があり、鹿児島訪問がてらいい機会だから会ってみようかなと思った次第。

なんとなくご理解いただけたでしょうか。

橋本さん、30代。

以前は庭師だったそうです。

つまり木の専門家。

「本当は野菜をやるつもりだったんですが、こっちに来てなぜか長崎さんにお世話になることになって自動的に柑橘です。柑橘はまだ分からないことが多いけど、木は専門なので」

「なかなか面白い経歴だね」

「この木は来年枯れるなあとか、まだがんばれるかなとか、すぐに分かります」

「なるほど。経験が生きてるんだね」

「ここの土は栄養が多すぎるんだと思います。野菜作りには適しているけど、柑橘には不向きかなあ。他の畑を案内します」

と、車で移動しつつ、何か所もの畑を見て回ります。

「柑橘にはこれくらいがいいでしょうね。栄養はあまり多すぎない方がいいみたいです」

「なるほど。結構違うんだね」

「僕、木も好きだし、あと草が大好きなんです」

「ところで、長崎さんってどんな人だった?電話で話しただけで、会ったことないんだよね」

「一言で言うと、変わった人ですよ」

「だろうね。でなきゃ、こんな農業できないよね」

「小柄で細身でしたが、信念というか、すごいですよね。その分、嫌う人も多かったけど」

「分かる気がする」

「余命宣告もされていたんですが、元気そうだったから、まだ大丈夫かなってみんな思っていたけど。急でした」

「おいくつだったの」

「75歳の誕生日の前日ですね」

「そうかあ。残念だな」

「今取り組んでいるのが、枯れた草の隙間に野菜を植えていく方法。玉ねぎとかにんにくとか落花生とか試しています。あとは放っておけばいいはずで、これが成功すれば手間もかけずに効率がいいはずなんです」

「こういうの、初めて見た」

「ほら、そこからもう葉っぱが出てるでしょ」

「ホントだ」

「長崎さんが亡くなった後、色んな取引先の人が来て、今日みたいに説明するんですが、最後の畑まで説明したの星野さんが初めてです」

「そうなの?」

「僕の話に飽きちゃうのか、途中から、もういいかなみたいな雰囲気で…」

「いや、普通聞くよね。だって興味深いし」

「この小屋も長崎さんの形見です。全部譲り受けて」

「そうなんだ。橋本さんはこの近くに住んでるの?」

「そうですね。少し離れていますが」

「一人で?」

「はい。彼女はいますが」

「そうなんだ。(特に聞いてないけど…)」

「星野さんは?」

「俺?俺は独身だけど。彼女がどうとかって歳じゃないし」

「そうなんですか。失礼ですがおいくつで?えっ!若く見えますね」

「そう?」

「今日、星野さんと色々話して、モヤモヤしていたものが吹っ切れた感じがします。なんか、スタートラインに立てたと言うか」

「そう?それはよかった。特にこれといって話してない気もするけど」

「青果のプロなんですね。色んな農家さんとお付き合いされているんでしょうね。色んなことあったんでしょうね。またいつかお話聞かせてください」

「そうだね。今日でもいいけど。指宿で飲むことになってるから」

「え~!今日ですか!指宿ですか!」

「遠いでしょ」

「指宿はたまに行きますが。えっ、ど、どうしよう。仕事はなんとかなるか。あ~、しまった!明日の朝、彼女と約束が」

「それはさ、彼女を優先するだろ。機嫌損ねたら大変だし。そうだ、彼女も連れてきたらいい」

「なるほど!いや、待てよ。やっぱり彼女はいいや。とにかく後で連絡します」

「了解」

橋本さんの印象、理工系の博士って感じかな。

でも、将来期待大の若者。

だけど、まだまだ始まったばかり。

失敗して悩んで、また失敗して悩んで。

だけどきっと上手くいくはず。

がんばれよ!

あと、彼女ともうまくやるように。

 

続く